お盆に危うくご先祖様のところに帰りそうになった日記

 特別養護老人ホームに入っている父が、肺炎にかかって入院すると、早朝に電話があって叩き起こされました。
 クライアントがお盆休みの間に片付けておきたい仕事が、いくつかありまして……。ぐっすり寝て起きて、いざ終わらせようとしていたところだったんですよ。
 ましてや、母は熊本に里帰りしていて、ちょうどこっちにいない。
 あれこれとうまくいかずに俺が精神的に参ってるところだったってのもまた、困った話で。
 
 ついでに言うと、ライブを観に行くことへのトラウマを払拭して何とか予約したライブの、ちょうど前日でもあるんですよ。
 このライブハウスで二年ほど前、同じバンドのライブを思い切って予約した時、父が倒れて家族がバタバタして予約をキャンセルすることになって、「キャンセルは当店では基本的に認めていないので絶対にやめて下さい」って言われたんですよ。でも頭を下げてキャンセルした。
 なんで同じことが起きてるんだ。もうキャンセルしたくないぞ。
 「またこういうタイミングかー」とうんざりしながら、病院に行ったわけです。
 
 早朝に起こされて家を飛び出て診断を聞いて入院の手続きをして、一旦家に戻って仮眠取ってねこの餌を一日分あげてトイレをかたして仕事の連絡をして、もちろん熊本の母にも連絡をしつつ、またもや病院に戻る。
 「とにかく今夜は家族が付き添っててください」と、当直医にきつく言われる。
 「容態は落ち着いてるし誰かがついてなくても大丈夫ですよね」とか、「今は精神安定剤も飲んでるしあんな体調だから夜中に暴れることもないって聞きましたけど」とか、「仕事がいくつかあってやらないといけないんですが」とか、「眠い」とか、「俺ストレスと疲労で倒れそうなんです」とか言ったけど、ダメ。
 がっかり感と疲れで入院書類の前に突っ伏してる俺に対して「こういう時は家族皆さんにお願いしてます。ついてて下さい」って淡々と告げる女医。
 受け持ちの患者以外は倒れてもいいと申すか。お前のおかげでこの後大変なことになったんだからな。
 
 その後、とんぼ返りで熊本から帰ってきた母に現状報告をして、「旅行で疲れてるだろうし今夜は俺が付き添うことにするよ。もう帰っても仕事もできないだろうし」って言って、一人で病院に残った。
 もう父も寝ちゃってるし、簡易ベッド借りて一晩横で寝るだけだから大丈夫だろうと思ったら、ここからが第二ステージだった。
 
 俺が寝入ろうとした辺りから、30分おきぐらいにどうでもいいことをわめいては、こちらの眠りを邪魔する父。
 看護婦に対しては「ご主人様の言うことも聞けないのか!」って当たるし。相手が女だから強気。何がご主人様だよ。
 俺が叱りつけるとしおらしくなって、「◯◯君もいたんですか」とか言う。相手が男だから卑屈。 名前に君付けなんてあんたにそんな呼ばれ方したことねーよ。
 「こんなクズに成り果てた父は見たくなかったなー……。こんな人じゃなかったんだけどな……」っていう思いと、ぐるぐるまわる今までの挫折とこれからの生活のことで、一晩中軽く地獄。
 
 月曜の朝になったら、昨日の当直医じゃなくて担当の主治医さんが来てくれたので、改めてこちらの事情なども話して母と交代。家に戻ってぐっすり寝直した。
 悪夢は見た。