青少年育成条例改正案、今回は見送る方針

 寝不足のまま、一時ソースのお堅い文体を読んでもちゃんと理解するのは難しいだろうと判断して、東京都「青少年育成条例改正案」に関するさまざまな話題、各方面の動き、経緯をつぶさに見て回る。
 現状とそれに至る流れを把握した上で、自分の意見を確立して行動を決定し、しかるべき方法で微力ながら抗議行動をしておこうと考えたのです。もちろん、よく検討した上で「これは抗議しなくてもいい」という結論が出たならば抗議もしない。結論ありきや感情論優先はしない。なるべく慎重に、慎重に。
 ところが見れば見るほど掘れば掘るほど調べれば調べるほど理不尽の波が訪れて、いつのまにかなんだか大変おなかを壊しました。寝たら治るかと思って横になったらうなされる始末。
 で、目が覚めてニュース見たら「今回は決定を見送る方針」となってた。
 おなか痛めて転がってる間に丸く収まってて、まあ良かった。がっかりして具合悪くしただけで結局何も出来なかったけど、なんだか自分も何か成し遂げたような回復感です。
 これからは加持さんの「俺はここでスイカに水を撒いていることしか出来ない」に代わる表現として、「俺はここで腹痛にのたうっていることしか出来ない」というのが定番化することでしょう。
 以下、今回の騒動で思ったこととか拾った話とかいくつか。


●今回の騒動は、何年か前にmixiで起こった「利用規約の改悪事件」に似ているとずっと思っていました。
 mixiが「○日から利用規約を変更します」と言い出した新たな規約の内容が、そのまま適用すると「運営による非公開日記の公開・出版・引用などが自由に行なえてしまう」内容であったために、大量の抗議と脱会宣言が殺到して規約変更を余儀なくされたもの。
 そのときのmixi運営の説明が「そういう意味に捉えられてしまうかもしれませんが、運営としてはそういった運用をするつもりで決めた規約ではないのでご安心ください」と言ったものだった。
 これは、今回の騒動の都の説明によく似てる。「皆さんが思うような拡大解釈による条例の行使はいたしません、そういう趣旨の改正案ではありません」
 問題はそれをやるかやらないかではなくて、やろうと思えばやることが出来る、そういった悪い意味で自由な規則を作ろうとしていることなのに、それがわかってない。


●直接電話をして話を聞いてみたという人のサイトに、こんなやり取りが乗っていた。
 「具体的な規制の基準はどうなっているんですか? 都の代表が各作品をチェックして、描写が適当であるかそうでないかを判断するのですか?」との質問に対して、「具体的なことは今回の案が通った後で決めることになっているので、そのときにならないとわからない」というような答えが返ってきたという。脱力してしまった。
 このやり取りに関する話は、ひょっとすると話を大事にして問題を大きく取り上げてもらいたいがゆえの、虚偽のものかもしれないけれども。そうとでも考えないととても信じられないような回答であるわけだけども。
 仮にそうだとしても問題は、こんな馬鹿げた回答が帰ってくる可能性を、今回の改正案は多分にはらんでいるということだ。


●抗議に名乗りを上げた漫画家たちのうちの永井豪さんは、「ハレンチ学園はセーフですよ」と先方の代表者に話をされたらしい、と言う話も見た。これも信じられなくて脱力してしまう話。
 職員がその場の思いつきでセーフかアウトかを判断して規制できるという、線引きの曖昧さを、実施前に先方の代表者が実践してしまってる。


TwitterではTRIGUNの内藤さんが、「あーもーこんな面倒なことに巻き込まれたくないのに、アホ漫画描いて洋ゲー遊んで暮らせればそれで良いのに」と愚痴っていました。
 「抗議文書いてるうちに伊集院のラジオ聞き逃したじゃねーかよチクショー」とか言ってて、大層共感。


●そんな中、この記事は痛快かつ別の問題を浮き彫りにもしていますね。
 都・マンガ規制の問題点を読売新聞が身を呈して実証
 上記の永井豪さんに関するあれこれとか、『「みだり」って何? 「健全」って何?』の内容とか。そして、本当に重要なことを知るためには、大手マスコミが頼りにならなくなってきてしまっていることとか。
 短いながらも読み応えのあるすばらしい記事です。本来マスコミってこうあって欲しいなあ。


●理不尽の波に飲まれてしまったせいか、煽りが先走りすぎてしまった例や、茶化すことだけに特化した人が多かったのも、規制推進派の理不尽さと同程度に気になりました。
 でもさあ、「非実在青少年」って言葉がよくないよね。あまりにも面白すぎて妄想が先走るんだよなこの言葉。
 いやラノベとかに出てくる分にはすばらしい表現だと思いますけどね。
 「非実在青少年」という言葉で遊んでいるうちに改正案が通ってあらゆる業界に規制が蔓延する、という最悪の事態は避けられて良かったですよ。
 まあ自分はこの事態に頭を悩ませて胸を痛めておなかを壊して横になってただけなんですけども。