ああ人形遣いよ

 役所の用事を週明けに済ませ、火曜は書くべきものを上げて病院へ。薬をもらって渋谷に向かい、観てきましたのは江戸糸あやつり人形劇団結城座公演。人形と写し絵による乱歩・白昼夢。
 ダグさんのお誘いで観てきたわけですが、素晴らしかった。久しぶりに「いいものを観た」と実感できる内容でした。
http://www.youkiza.jp/news/rampo2011/index.html
 
 江戸糸あやつり人形だなんて観たことないんですよ。
 こんな大量の写し絵をステージで展開するなんてのも勿論初めて。
 生演奏をされる黒色すみれも未見・未聴だし。
 しかも乱歩のこのへんのお話も実は未読なんです。ところどころ断片的に話しに聞くことはあるんですけど、内容どころか乱歩の文体すらもあまり知らない。知ってるのは少年探偵団ぐらいのものなのです。わたしシナリオ書いたことありますしね。
 で、これらの全てがやたらめったらレベルが高いんだ。会場やら音響やら雰囲気なんかの環境も優れているし、なにもかにもが高いレベルで纏まってる公演でしたよ。
 おかげで頭の中で芸術の混乱が発生してしまって、どれかひとつに集中して観劇も感激も出来なかったという点は残念でしたが、とにかくいいものでした。
 「このムードは電気ブランをいただきたい」と言いながらの観劇開始だったんだけど、本当にお酒が飲みたかった。ほんの少し酔った頭で渾然一体になって受け止めたかったというのも心残りな点ではあります。
 でも酒入ってたら悪酔いしそうな内容だったな。わたしの詩が好きな人はきっとみんな好きだと思いますよ。
 伝統・格式・斬新・実験・耽美・エログロ。それと重要な点として、ユーモアがね。大切ですよね。
 
 距離が離れていたのではっきりとは見えませんでしたが、人形の細やかな動き、演技、糸使い、それと操り師の表情・気迫。あの辺が特に自分の心を奪ったので、肌でわかる距離で一度アレを見たいですね。
 それともうひとつ非常に印象に残ったのが、人形と人形遣いの会話のシーン。
「おまえは人形なんだから心なんかないだろう。俺が操ってやってるんだ」
「ではわたしを木から削り出し、人形の形にして、こうして創り上げたその心……それはあなたの中に生まれた、わたしの心。そのわたしの心が、わたしを作らせたんじゃないかしら」
「ってことは何だ、おまえは俺の中にいつまでもいるんだな」
 というやり取りがとても胸に来ました。あれも乱歩の話の中でのものなのか、それとも375年の歴史を持つ人形遣いだから言えるセリフなのか。
 いずれにしてもその言葉には、あの人形の心が宿っていたですなあ。
 
 その後、居酒屋にちょうど電気ブランがあったので、軽い方のやつをロックで一杯頂いて帰りました。
 その日にもらった薬を横において、よく眠りました。