少しだけ社会的な話

 中国産うなぎはマラカイトグリーンとかなんとかで、食べたらダメだ! 偽装とかもダメだったらダメだ!
 でもうなぎはおいしいし、たまに食べたい!

 以上が自分の知る限りのうなぎの知識です、多分。
 でも、本当はこう、養殖しているのを日本に持って来て一度川とかに流して「これで日本のうなぎだー」とかちょっとマッチポンプみたいなことをしているのも知っています。これってすごく悪いことのように見えますが、考えようというか、想像のしようによっては、ちょっとほほえましいですよね。

「中国からうなぎを持ってきたぞー」
「わー」
「ではこの日本の養殖場に、放流してみよう」
「あ!」
「なんだね君」
「さっきまでこの日本の養殖場にはうなぎが一匹もいなかったのに、ふと気づくと大量のうなぎがいますよ!?」
「おおお!? 本当だ! よし、このうなぎを急いで収穫だー」
「やったー国産うなぎだー大儲けだー」

 本当は放流してから一週間ぐらいは泳がせないといけないらしいですけど、でもこのマッチポンプ振りはなんというかこんな感じですよね。
 ちょっとだけドリフ風ですね。
 ところで、僕は恐れずに言いますけど、ドリフのコントの金ダライが落ちてくる奴って、あれは日本発祥なんでしょうか。言わば、いかりや発祥なんでしょうか。
 ちなみに、僕が『何を恐れずに』こんな話をしたかというと、大きく話がそれてしまって、当初のうなぎの話にもどって来れなくなるのを恐れずに話に入った、ということです。僕の知る限り、これはとても勇気のいることです。何の下書きもなく絵を描いているみたいなものです。しかも消しゴムとかも利かない奴で。
 漫画家さんが色紙にサインとイラストを書いたりするじゃないですか。あれは結構な技術だと思います。しかし、鳥山明に「ハンフリー・ボガードを描いてみてくれませんか、色紙にサインペンで」と突然お願いして、それを鳥山明が引き受けてしまうぐらい、僕は今勇気のあることをしていると思っています。
 ただ、鳥山明は実はハンフリー・ボガードの大ファンで、そらでも絵が描ける位かもしれないですから、結局僕の比喩は大間違いである可能性も捨てきれません。


 で、話を戻します。しかも僕はまだ勇気があるので、恐れずに金ダライのところに話を戻します。うなぎにまだ戻りません。
 日本のコメディの下敷きには、やはり海外からの影響、特にアメリカのコメディやモンティ・パイソンが色濃く出ていると思います。でも、そういうところでも、金ダライが落ちてきていかりや長介の顔が歪んで子供も大人も大爆笑、なんて事はなかったですよね。もっと皮肉的なものとか、あまりにもくだらなすぎるものとかが多くて、日本のコントは独自の進化を遂げていったんでしょうか。
 ところで、隣の国の中国のコントがどんなものなのか、僕は全く知りません。どんなコントが作られ、上映されているんでしょう。日本はかつては中国の影響を大いに受けてきたわけですから、この辺にいかりやの源流がある可能性も捨てがたいです。
 しかし、日本のバラエティ番組がアジア各国でパクられたりそのまま放映されたりして人気を博しているところを見ると、やっぱり日本独自のコントというものは、いかりや発祥な気がしてならないのです。ひいてはアジアのコントはいかりや発祥。

 ところで、山椒ってありますよね。あれって、うなぎがなかったらだいぶ日本の食卓に根付かなかったというか、今でもうなぎを食べるとき以外に、普通の家庭では滅多に使わないですよね。土用の丑の日はうなぎの消費量を上げ、うなぎ屋を救ったと言いますが、僕からしたら本当に救われたのは、山椒のほうなんじゃないかと思います。
 必ずうなぎとワンセット、うなぎ屋に行けば置いてあるし、スーパーでパックで買っても絶対についてくる。土用をきっかけにうなぎのパートナーになれなかったら、多分今頃山椒は『はじかみ』とか『かんずり』とかと同じような、微妙な微妙な存在になっていた可能性が高いと、僕は思っています。ちなみに僕は山椒が大好きです。


 でも待ってください! これこそ中国産ですよね!
 山椒を大量に使うのは中華料理、中でも四川料理ですし、きっと本場はあっちでしょう。なので、「完全国産絶対安全気ニスルナ!」と掲げられたうなぎが売っていて、「わたしたちが、養殖しました。あと、捌きました」的な写真がついていたとしても、きっとそこに同封されている山椒の小さなパックは、中国産の粉末だろうと僕は思うのです。納豆のタレとか辛子とかを使わないようなタイプの人と同じように、「俺、山椒なんかいらないよ」って人にはどうでもいい話かもしれないですが、僕としては死活問題です。
 死活問題はちょっと言い過ぎました。自由に山椒が振れなくて、ちょっと残念です。
 うなぎの件は相当シャレにならない事件だったし、食べる量も多いですし、決まったシーズンに大量消費はあるしで、この件は大問題です。でも、山椒に関しては、まあうなぎとともに何とかここまで生き残ってきた奴だし、余り責めるのはよしてあげましょう。所詮粉末ですから、量もそんなに多くないですしね。
 例えばですよ。先ほども話した通りに、僕は中国のコントとかがどうなっているのかを知らないわけで、金ダライを落として爆笑、と言う流れが中国発祥だとでも言うのであれば、いいでしょう。この際、山椒の件は水に流しましょう。
 それぐらいの度量は、僕にはあるんです。だって山椒が気軽に食べられないのは残念だけど、ドリフ面白かったもん。


 関係ないですけど、金ダライによくうなぎが泳がされてて、それを手づかみしようとしてヌルヌルしてうわー! っていうの、あんまりテレビとかで見なくなりましたね。それどころか金ダライが落ちる様子すら、いまのバラエティでは見れなくなってしまった。
 面白いのになあ。いいじゃないですか、そういうのがもっとテレビで放映されたって! クレームに踊らされすぎてちゃ面白いものなんて作れないんだ、日本のテレビはこのままじゃいけないぞ!
 以上、せっかく話がうなぎに戻ったのに、最終的には日本のテレビ批判で終わりました。社会的です。