鶏皮親子丼

 そもそもなんでレシピなんてカテゴリがあるのかについてのお話をしていませんでしたね。
 僕は家を出たのが遅く、20代半ばを回ってから実家を出ました。そしてそのときに初めて自炊を開始したのです。それまでは台所に立つのはカップラーメンのお湯を沸かすときぐらいのものでした。
 基礎から少しずつ学んでいって、いまだに料理自体は下手です。ただ、料理を思いつくのは割りと得意です。「また一石がおいしそうなことを言った!」は遊女さんの名言です。一石はおいしいものを作るのではなく、おいしそうなことを言うのが得意なのです。
 料理は想像力を喚起してくれます。仕事の合間の息抜きにメニューを考案するのは楽しいものです。また、作った料理を記載したり、それがどういう風に作ってどういう風においしかったのかを書きとめて人に発表することは、文章のいい練習になります。
 それに僕はいっぱしのライター(及び想像力で飯を食っている人たち)は、食べ物に対して一家言あるべきだと思っています。少なくても僕の好きなアーティストや作家さんは、みな食べることに対して貪欲で、食事に対して面白い見解を述べたりしています。
 さらにもうひとつ、大切なこと。世の中には有象無象のレシピがありますが、レシピなんてものは適当でいいのです。おおさじいくつとかカップ何杯とかどうでもいい。そんな指示に従うよりは、簡単な材料表とレシピのアイデアを見て、自分なりに味見しながらアレンジして料理したほうが、絶対おいしくなるのです。
 その信頼を胸に抱きつつ、「こういう料理も、おいしそうじゃないですか」って情報を僕のブログで人々に発表していくことは、僕が僕としてブログをやっていくにあたって意外と重要なことなんじゃないかなって思ったと、そういうわけでレシピを書いたりしているわけです。
 あとぶっちゃけ、「一石さんて文章も書けて詩も書けて料理も出来ておしゃべりも上手でなんて素敵な方かしら!」ってモテたかったんです。ずいぶんぶっちゃけたなオイ。


 さて、そんな風にレシピにいろんな思いが詰め込まれている割には約束を守りそびれたので、今日は約束を守りに来ました。
 みんなー。最初のレシピで仙人が鶏の皮の使い方について「いずれ伝授してやるでな」と言っていたのは覚えているかな? もちろんみんな、あのときにむね肉から引っぺがした鶏の皮は、ちゃんと冷凍して保管してあるよね!(無茶な前提)
 鶏の皮を使った親子丼を紹介いたします。

鶏皮 卵 長ネギ しょうがかにんにく ダシのもと 醤油 お酒

 鶏の皮を一口大に切って雪平鍋とか小さなフライパンとかに乗せ、最初弱火でだんだん中火にして、焦げ目をつけつつ油を出していく。このときに黒こしょうを振っておく。自分自身の油で揚がるかのようにバチバチという鶏の皮を横目で見つつ、残りの材料をスタンバイ。
 鶏の皮は少し癖があるので、長ネギを青いところまで使って入れるのがお勧めですが、最近ネギが高いので、安く買える万能ネギを今回は使いました。皆さんはどっちでもいです。適当な長さに切りましょう。そして、しょうがかにんにくを切って入れる。さっぱり目がお好みの方はしょうがをひとかけ薄く千切りに。こってりが好きな方は、にんにくをひとかけスライスして入れましょう。
 鶏が色よくなってきたら、できればキッチンペーパーなどで油を少しとり、醤油・酒・ダシのもとなどで味付け。甘いのが好きな方は砂糖を入れたりみりんを入れたり、塩気が足りなければ塩を入れたりお好みで。味を見て「まあこれでいいかな」となったら、割りほぐした卵でとじ、どんぶりの上の白いご飯の上に盛り付けて出来上がり。

 この前後は指を切っていて非常に痛かったころなので、常に控えていてくれる救急バンソウコウ。ありがとう。
 普通の親子丼に比べて歯ごたえの弾力が圧倒的に良く、鶏の脂と卵がいい感じにマッチして、上質なマヨネーズのような味になります。もちろん親子丼の友、七味も一味も非常に良くあいます。
 そして特筆するべき点は非常にリーズナブルで腹持ちもいいこと。鶏の皮は100グラム50円程度で売られているので、とても安価におなかいっぱい、食べられます。
 僕は個人的には親子丼に長ネギと玉ネギが両方入っているほうが好きで、しかもお肉もむね肉ともも肉が両方入っているのが好きというちょっと困った性質なのですが、今回はうっかり玉ネギも入れてしまって失敗しました。鶏の皮がだいぶ甘みを出すので、玉ネギは入れないほうが良いです。あまーくなります。
 そういうのにスパイスかけて食べるのもいいんですけどね。きっとそれこそ、三つ葉が良くお似合いかなあ。甘い関係には刺激が必要。これ、世界のルール。