神経衰弱

お皿をわざと取り落して
割れる音色に聞き入っている
耳を澄ませば
昼の音色は緑色だよね
だってそうじゃない?


線香花火をバチバチ
頭の上で光らせて燃やして
ぽとりと落ちるまでの時間を
ストップウォッチで計り続ける
そんな午後は緑色に染まるよ
だってそうじゃない?


雲を突き破るロケットみたいに
指の先から何かが激しく空へ
目で追ってももう空は緑色
どこもかしこも緑・緑・緑


夢の中での言葉はまるで
緑色した苔が生えたよう
とても湿ったにおいと共に
花と月と風と鳥が緑の色に
さあっと変わってまるでさっきまで
何も無かったようにこっちを見ている


ひとりで神経衰弱を続けている
カードをめくるたびに裏のカードを
かきまわして記憶も何もかもを
ごっちゃにしてからまためくるんだ
それでも揃ったクイーンが僕に
笑顔でキスを望んでいる
そんな昼の色は緑色なんだ
だってそうじゃない?


そしてひどく神経衰弱した僕は
全部のカードをなんとか揃えて
そのときストップウォッチを押してタイムを
計ったけれど時計の針はもう
何回も回りまわりまわり
結局どれぐらいの緑色が過ぎたか
わからないままに全てが緑の
神経衰弱に包まれていく


カードの裏も全部緑だ
めくってみても全部緑だ
だからどこをめくってもカードが揃うよ
緑色の中に僕はおぼれていくんだ