新世界にようこそ

街路樹に漂う歌の世界

侘しさは弾丸のたたずまい

夢の夜逃げの光景を見ながら

何を思い出そうとしていたのかも定かじゃない

シビアな光が丸みのない町に降り注ぎ

直線の影が僕を潤す

痛みのないクズ籠なんてまっぴらだ

牛の勇壮ないななきが牛を怯えさせる

溝にはまった左足

自動ドアにはさまれた右腕

徐々に完成していく拘束感

じわじわ蝕まれる毒に僕は安堵した

パラボラアンテナは僕を受信してはくれない

あのアンテナがあるたくさんの家のひとつひとつが

僕の言い分を聞いてくれないはずだった

背後ではいつも扉が閉まる音がしている

僕はもうそれに振り返ることすらなくなった

星の臭いに笛を吹き

窓辺の虫たちが夜空を見上げる手助けをする

あと何分かで産み落とされる

豊かで毛むくじゃらな新世界にようこそ

歯ブラシをなめると甘い味がしたが飢えはしのげない

タバコ屋の手前でそれに気づかされた

たくさんの気がふれた子供たちが

特殊学級を編成して下校を繰り返す


君は菱形をしているね


飛び降りた先であれは火あぶり


喉がいがらっぽいから「明日会いましょう」なんて決して言えない


こみ上げる怒りを納めるハコを買いに出かけた


美しいのならそれが何よりでしょう


たちまち砂漠化した玄関に思いを寄せながら


ああ、今日もなんだかひとりぼっちの紙芝居屋になってしまった