ほらそれさ それどこさ

 雨の中、遠出をした帰り道。ついさっき面接で予想外の試験をとっさにこなしたけれど、ああした方が良かったなあとかこうした方が良かったかもとか。ブックオフに寄って帰ろうかなとか。
 おなかがすいたので、家に帰るまではまだ時間があるからちょっと小腹を満たそうと、コンビニに入ってサンドイッチを買う。安いけどボリュームのある、サービスサンドとか言うのを買ってみた。食べる。うん、割とうまい。
 右手にサンドイッチ持って左手に傘持って、水たまりを踏まないように暗闇を凝視して、夜道を歩いてた。結構遠いなブックオフ。すれ違った女の子が美少女だった。雨が強くなってきている。
 幸せってこんな感じなんじゃないかなあと思って、歩いた。
 嫌なことや辛いことや悲しいことや思い出したくないことや切ないことがたくさんあって、そのことを考えると気が重くなるんだけれど、でも、とりあえず僕は歩いていてサンドイッチはうまい。
 お金かけて贅沢したり旅行したりするのも楽しいし幸せだけど、こんな安っぽいものでも「うまいな」と思えて、雨だけど目的があって歩いていて、その道中で綺麗な女の子とすれ違って「ああ、綺麗だな」と思えて。こういうのが幸せなのかなあと思ったのでした。
 家まで帰ればねこがいるしね。
 僕は優しさとか美しさについて考えることが多いんだけど、今日はなんとなく、幸せについて考えて歩いた。