意思を強くするための意思がない

 昼間から外に出かけて、久しぶりに大きな駅やら都会やらをうろついた。
 マスクをしていきたかったけど、まだ関西でしか新型インフル感染者が発生していない現時点(5月19日時点)でもやっぱり既にマスクは売り切れ続出で、人ごみに出る際のちょっとしたエチケットも許容してはもらえない世知辛い情勢のようだった。
 でも、この前見た記事で顔に傷がある男性の方が女性にもてると聞いたし、まあいいさ! マスクで顔を覆うことなく、この傷をさらけ出して僕は歩き、女子の視線とハートをキャッチするんだゾ!


 と、そこで僕の頭の中には妄想が渦巻いた。
「あらあらあの人、顔に傷ある男がもてると聞いてわざとやってるのかしら。自ら顔に傷をつけて、このご時世にマスクも拒否して見せびらかすなんて、なんとも愚昧な生き物だこと」
「そもそも傷以前になんとかするべき部分がいくらでもありそうなものでしょうにねえ、アハハハハ」
「むしろマスクをつけているぐらいの方が良いんじゃないかしら、アハハハハ」
 僕は100円ショップに足を運んで、三枚で100円の胡散臭い中国産マスクを買って装着することにした。
<問>
上記の文章を読み、この人物に最も必要な処置を答えよ。
1.もっといいマスクを買って装着する。
2.ありもしない幻聴に心を揺り動かされない。
3.心身の健康のためにも、不眠のまま街を出歩かない。