長袖シャツの中学生
暑い。だけど出かけると電車とか店とか下手すると街を歩いているだけで寒い。空調効き過ぎ。長袖が欲しくなる。
僕はこういった暑い時期になると、長袖がらみで思い出すことがあるんです。
中学三年生の夏頃、僕は急激に痩せて今の体型に近づき、肌も見る見る間に白くなっていきました。
その頃から僕は、寒さには弱いけど暑さにはめっぽう強く、学校が衣替えになってクラスメイトが半袖になっても、ずっと長袖シャツを着ていました。
どうにも肌を何かが覆っていないと落ち着かないたちだったんで、多少暑くても長袖の方が過ごしやすかったんですよ当時は。袖まくりとかもしないし、みんながダラダラ汗をかいて授業を受けていても、ひとりで長袖で涼しい顔。体温が低いから平気。
結構なマンモス中学に通ってたんだけど、多分校内で一番最後まで長袖シャツを着てたんじゃないかなあ。
そうするとやがて、うわさが立ち始めました。「何でいつまでも長袖なの?」「暑くないの?」「長袖でいる理由が何かあるんじゃ?」「寒いのかな?」「いや、肌を出せない理由があるんじゃ?」とかそんな感じで。
「はっはっは、実はこの下には昇り龍が描かれていてね」とか言って適当に仲間内で笑いを取っていたんですが、あの頃から20年近くたって、ようやく気づいたことがあるぞ。
あれって手首のリスカ痕とか、腕にびっしり注射痕とかを疑われてたんじゃねーか。ちょうど急に痩せだして、顔は不健康まっしぐらだし、何かと保健室に行ったりしてたし。
あの頃はまだその手のティーンエイジャーは知名度が低かったけど、当時のクラスメイトの微妙な笑いは、長袖野郎に対する蔑みの笑いじゃなくて、かわいそうな人への憐憫のソレだったのかも!
その後無事、夏休みに入る前に半袖を解禁したので誤解は中学時代に解けていると思います。