止め処のない欲求
わたしは『不健康様』や『健康様』といった、いくつかの食にまつわる超自然的存在を恐れ奉っています。
『不健康様』は一度降臨なされると、思うさまジャンクフードやファストフード、化学調味料まみれのメシなどをむっしゃむっしゃ食べることを強要なされます。カップ麺食って合成酒ベースの缶チューハイで乾杯、ツマミはコンビニ惣菜とポテトチップス! なんて事がしたくなったら、それは『不健康様』降臨の証です。
それとは逆に『健康様』は、降臨なされるとやたらとメシの出来にうるさいです。やれ野菜を何品目とれだの油を控えろだの塩分を抑えろだのこれはこういう調理法じゃないと栄養が逃げるだの。細かいことが気になってしょうがなくなるのです。
どちらもご降臨なされたら、ただ過ぎるのを待っていてはいけません。その要求に素直に従うのが、お早くお帰りいただくためのコツです。見て見ぬふりをしていると、いつまでも頭の片隅に居座って、仕事の邪魔をしてくれます。
そんなわたしに今週降臨なされたのは、今まであまり馴染みのない方でして、おそらく『腹八分目様』か何かだったのだと思います。
メシを食っても食っても食後腹が減っていて、一日中メシのことばかり考えてしまって仕事が手につかない。二時間おきにメシが食いたくなる。「そろそろ腹が減ったから手を休めてメシにしよう」の状態が一日中続くと言う、面倒な方でした。
とりあえずこの方には、「食材をありったけ調理して食い、その辺にある常備食も続けて食う」という対処法で退散していただきました。その代償として横っ腹に、この年齢ではお引き取りが難しい肉が残りました。
そうして『腹八分目様』の機嫌をとることに成功し、自分の仕事も一段落させたので、PCで大好きな格ゲ対戦動画なんかを見て過ごしていたのですが、気づくと眠ってしまっている。
おやいかんいかんと起きて家事なんかを終えて、また動画を見ていたら寝てしまった。
どうやら眠りが足りないようだな、ということで布団に入って眠ってみたところ、うっかり半日以上眠ってしまった。
うつらうつらしていた土曜の夜から日曜の日中にかけての、一般社会人における貴重な休日時間帯を、ぐーすか眠るだけで過ごしてしまったぞ。別にそんな疲れてもいないのに。
こいつはあれか、今度は『惰眠様』辺りが降臨なされたのか?
枕元で気持ちよさそうに眠っている、このふさふさして暖かくてやわらかいやつが怪しいな。これが『惰眠様』だろうか。押してみよう。
「にゃー」
目を覚ましてコタツをつけたら、『惰眠様』はそちらに入っていかれました。
さてこのペースで行くと三大欲求的には次は性欲の番になるわけだけれども、今のところ自分的には制欲とか製欲の方が高まっているようなので、ぼんやり何か書いたり考えたりして夜を過ごすことにします。
あっ、『惰眠様』だ!
「にゃー」
すやすやすや……。