ダークブレイズと自作TRPG

 創作好きにおけるTRPGと、お笑い好きにおける落語って、似たようなポジションなのじゃないかとふいに思った。
 名前は知ってるし興味はある、だけどほとんどの人は積極的にそれに触れる機会が得られず、また対象がだいぶディープなものなので、一人で入っていくのも気が引ける。誰かいい引率役が身近にいれば、かなり近しいところにあるものなのにね、って感じが。
 こういう距離感の近似趣味って、他にもいろいろあるんでしょうね。


 土曜日はTRPGのマスターやってきたんですが、まあ反省しきりでした。
 多分つまらないことはなかったはず。だけど、やりたかったことがちっとも出来ず、楽しませたかったことの半分も出せず、それでいてしゃべりすぎて体はぶっ壊れて家に帰って具合悪くて転がってばかり。
 まずは事前に眠っておかないとダメだねやっぱり。体調不良は全てのポテンシャルを下げる。セッション直前に食い物に当たったのと、睡眠障害が重なったのが、きつかったなあ。どっちか片方ならどうにか切り抜けられたかもしれないけども。病気明けに眠らないで出かけて一日明瞭な思考を保っていられるほど、自分は頑丈な体じゃない。
 体力ないならない体力をうまく運用しないとダメだ!


 そんな風に自己反省をしつつも、再来月もマスターをやる予定は立ててきたので、早速次のお話を考えながら家でゴロゴロしていたんですよ。ゲームの直後の方が創作テンション上がってて、シナリオ作るのが楽なので。
 その流れで「最近のTRPGシステムで、もっと遊びやすくて自分向けのやつはないのかなー」「古いゲームの方が好きなのが多いんだよなー」「いやはやすっかりTRPG老いぼれじゃのう」とか思いつつ、自分の知らない新規のTRPGシステムをちょこちょこチェック。
 そうしたら、ダークブレイズと言うゲームが、わたしの心を掴みました。
 いや、正確には掴んだというかなんと言うか、驚いた。
 これって自分が10年前に雛形を作って、そのまま制作を停止していたゲームのアイデアに、非常に似てる!
 詳しくはこちらこちらを見ていただけると書いてあるのですが、ダークブレイズがどういうゲームかと言いますと……。
・有害大気に満たされた世界を、PCたちが一台のタンクに乗って闊歩するTRPG!
・タンクの原動力はマスコットキャラにもなるドライアド!
・シナリオの進行はボードゲーム風味に。ゲーム性を押し出してGMの負担を軽減!
・イベントのランダム性が高いから、GMがPCを作ってシナリオに参加することすら可能だぞ!
 と、この辺りの割とゲーム的に核となっている要素が、自分が考えてたものと良く似てたのです。
 ちなみに自分が考えていたやつだと、こんな感じ。
・有害な霧で覆われた大地を離れ、PCたちがひとつの飛空挺に乗って旅するTRPG。
・飛空挺の原動力は、意思を持つ特殊な樹木。
・シナリオの進行の中にスゴロク的要素を含めることで、ゲーム性を押し出しつつGMの負担を軽減。
・イベントのランダム性が高いから、GMがPCを作ってシナリオに参加することすら可能だぞ!
 似ている要素を抜き出してみたけれど、重要なのは、どうもメインコンセプトが似てるっぽいこと。最後の一行は同じこと書いた(笑)。


 いやね、当時はTRPG冬の時代に突っ込んでたころで、何とかこの閉塞を打ち破る手段はないものかと自分なりに考えてて、その結果として「GMの負担を軽減して初心者の間口を広げる」「ボドゲ要素を取り入れて手っ取り早く面白く」「シナリオがなくてもランダムチャートを振るだけでもゲームできるように」とかがアイデアとしてあったんですよ。
 もうこの業界に新しい人材は入ってこないんじゃないだろうか、だとしたら社会人ゲーマーにとってTRPGの最大のネックは時間と場所の確保だ、せめて時間だけでもなるべく削って遊べる方法はないだろうか……とか本気で考えてたんですよ。
 今回、ダークブレイズのシステムをちょこちょことネットで見て、「まさかこのアイデアが被るだなんて!」とはちっとも思いませんでした。自分が↑みたいなことを考えてた当時は、「何で誰もこのアイデアを出さないんだ、今必要なのは重たいゲームじゃないはずなのに」とか思ってたんですよ。こういうシステムを出してこないことが不思議だったんですよ。
 でまあ、自分がやりたいからって言うのもあって、必要は発明の母といいますか、自作に至ったわけですが。しかしさまざまな事情が重なって、結局作り上げられずに現在に至っていたわけですが。
 結構データが多いシステムや、綿密なサポートでユーザーをつなぎとめる方法論が成功を収めている今においては、タイミングがちょっとずれちゃってるのかもしれないけど。でも、自分が考えてたのと同じようなシステムが世に出て、遊べるようになってるって言うのは、何も関わってないのになんだか感慨深いなあ。
 一度遊んでみよう、ダークブレイズ。それと自分が作ってたゲームも、もう少し省みてあげようかな。「ナイーブな、ゲーム」ってコピーのついた、ポエトリーで詩人らしいTRPGだったのですよ。ああ懐かしい。