三段活用

 今日、髪を切ってくれた男が三段な男でした。
 はさみの入れ方、持ち方、切り方、髪の扱い方などが雑で時折痛くて少々不安を覚える感じ。散髪中に考え事をしていたんだけど、その危なっかしいはさみ捌きに気もそぞろになってしまうほど。たまに肉挟まってる気がする。怖いよ。
 いかんいかん気にすれば気にするほど怖くなってくる。気にするのはやめよう。もしもなんか痛い目にあったらそのときに文句を言えば良いんだ、恐々としながら髪を切られているのは嫌だものと考え方を変えた途端。急に手さばきが丁寧になった。あれ、良いじゃない。しかも結構うまいじゃない。
 評価を改めて安心して切られていたら、今度はなんだか切り方が偏執的になっていることに気づく。何度も何度も細かいところにハサミを入れる。少しずつ数本ずつちょきっと切る。はさみを変えて切る。頭を動かして切る。バリカン持って来て少しそぐ。髪全部切り終わって体についた髪を払ってるときも切る。なんか髪吸い取る奴と二刀流で切る。一旦手からはさみ置いて、終わったかと思ったらまたはさみ持って切る。
 しつこいよ! なにその妥協を許さない姿勢!
 その後も、なんか髪をずっとクシでねめつけて、ご主人の理想の形を追求しておられたので、わたしは彼のやりたいようにお任せすることにしたのだった。
 こうして、雑→丁寧→芸術家肌の性格変遷三段コンボを喰らったのだった。