前にもした気がする声の話

 お昼に水道局に電話して、「ただいまお電話されているのはご本人様の奥様でよろしいでしょうか」と言われました。この扱いにも慣れました。
 この場合「いいえ本人です」って言えばすぐ話が通るのでいいですよね。「奥様ですか?」だと「違います」の後に「お嬢様ですか?」の二手目を返されることが何度かあったので、それよりは勘違いが蔓延しなくていいです。
 「いいえ男です」って言い返すのもなんだかおかしいし気まずいしさあ。
 面倒くさいので「はいそうです……」って受け答えて女性設定のまま電話を終えてしまったこともあります。
 
 お昼に公共機関に電話したり、勧誘の電話を受け取ったりするのは奥さんの可能性が高く、女性を男性と間違えるよりは失礼に当たらないから「奥様ですか?」が基本の返しになるんだろうなとは思います。
 しかしウチの父のように、名前が「泉」って名前なもんだから化粧品などの勧誘電話がかかってくると「俺が女みたいな名前だから言ってるんだろうこのやろう」と逆にケンカ腰になってしまうケースも身近で散見しています。男にも女扱いされて怒る人もいるっちゃあいるんだよね。
 わたしはそんなことで腹を立てるのが面倒くさいので放置ですけど。
 
 でも、この「電話口で女性に間違えられる」ってわたしの知人に話すと意外に思われることが多い話なんですよね。
 ニコニコにネットラジオも上げているので、わたしの声に関しては皆さんも容易に確認が可能だとは思いますが、それを聞いても「確かに声は高いけれども女性と間違うほどじゃない」って大抵の人は判断するんじゃないでしょうか。ましてや奥さん→女の子への以降はないよねえ。
 自分でもこの件は疑問に思ってたんですが、以前、わたしが家の電話に「はいもしもし一石です」って出てるのをそばで聞いていた人が、こう言いました。
「声、女の子みたい」
 どうやらですね、見知らぬ人からかかってきた電話を取るときの緊張と、電話応対のよそいきの声の作り方があいまって、結果として声が高くきれいになって、女の子みたいになるようなのです。
 なるほど確かにそう言われると、初対面の人に会うときなんかは緊張して、声が自然と高くなるな。声帯の筋肉が収縮して細くなるせいかもしれないし、威嚇的な低い声を排除しようとする(わたしはあなたに敵意はないですよ的な)ある種の保護本能みたいなものなのかもしれない。
 
 ですけどそれももう昔の話です。
 かつてはどこの誰からかかってきたのかわからない電話に出るときに、緊張と歓迎の意がないまぜになっての結果として「女の子みたいな声」が出ることもありましたが、携帯電話を所持してからは電話に出る前に相手が誰か大体わかります。
 いまだに知らない番号からの電話に対しては、よそいきの声で出ることもありますけれど、知人からの電話は出る前に「ああなんだコイツか」ってわかっちゃうからぼやーっとしたノペーっとしたテンションで受けることになります。「あーもしもしぃ」みたいな。
 なので、わたしが電話に出るときにたまに代理で現れていた女性に、わたしの友人たちはもう会うことはないのだろうと思います。
 
 余談ながら、わたしと遊佐邦博と他友人数名でわいわい面雀を遊んでいる様子をテープに録音して、それを遊佐が文字起こししようとしたことがありました。
 そのときテープの声を聞いた遊佐の姉が話しかけました。「アンタの友達の集まり女の子もいるんだ」「いないよ」「この声の人女の子でしょ」「違うよ一石さんだよ」
 あれ、見知らぬ人との電話のときだけじゃなくてもわたしの代理の女の子は現れるんだな。てか今日水道局に電話したのは受動的じゃなくて自らの能動的連絡だ。「誰かわからない人からかかってきた電話に出るからだ」っていう前提条件が崩れてるな。
 結局どういう経緯で女の子が召喚されるかはわかりません。
 どうやったら女の子がここに現れるのかを教えて欲しい。架空もリアルも両方です。