劇団InnocentSphere 23分後【―The World 23 minutes later―】観たよ

 イノセントスフィアのお芝居、『23分後』を観てきました。
 「あんたの友達が出てるんだかなんだか知らないけど、イノセントスフィアってどうなのよ、見に行って損しねーの?」とお思いの方にお伝えします。すごくぶっちゃけた話、充分観れます。面白いです。
 劇団の雰囲気や、目の前で体感できる役者の演技、脚本の妙、生ならではの演出、どれもそれなりにあれこれ楽しめます。お話もあまり人を選ぶ内容ではありません。芸術的過ぎず、思想的過ぎず。
 つまりはおすすめです。お芝居というものを観てみたいけど何を観たらいいものやら、という方は、一度劇場に足をお運びになることをおすすめいたします。
 
 内容はいわゆる群像劇でした。
 過去に挫折を抱え、妻子と別れ父は死の床、仕事も失った主人公。
 悲しみを負った監察医とその妻。
 隠し子が発覚した人気女優。
 最後のシーンを撮影しようとする、ベテラン斬られ役俳優。
 巨大な謎の球を転がし続ける外国人二人。
 これらの場面と、それぞれに絡む人々、あとは主人公のみが誘われたネット上の仮想空間。
 各場面が細かく切り替わり、ストーリーは進んでいきます。
 そして、世界に終わりを告げようとした音楽が始まって『23分後』、主人公は誤解を解いて舞い戻り、人は世界の美しさを知る。
 そんなお話でした。
 
 客を飽きさせないこまごまとしたくすぐりの部分や、時折入るシリアスなシーンの配分は、見事でした。
 23分のカウントなどの、演出的な盛り上がりも良かったですし。ああいうのはわかってても燃えるし、生のお芝居の苦労が垣間見えて、いいですね。
 終盤、話をまとめていくカタルシスも心地良いです。
 終わらせるところも「ここだよね」ってモノカキ視点で思ってたポイントでばつっと終わって、やっぱりあそこだよなあ。引き際の余韻がふわーっと残りました。
 それぞれの問題がきれいに解決しきってないけど、それがキャラクターの今後の人生を活かすことにつながるわけで、テーマにもあってますよね。
 それぞれのキャラクターのストーリー的な終着よりは、テーマを優先させて話を終わらせるって言うのは、エヴァのテレビ最終回の手法だなーとか思いました。
 一回こっきりで中々見返しの利かない劇場芝居で、なんでもかんでも抱え込んでも、伝えきれないもんね。
 
 以下は、まあ言っても仕方ないこと。
 群像劇の終わらせ方としては、全部をきれいに纏め上げて伏線回収の美しさで感動させる手法と、とにかく強引にでもオチをつけて全部を繋げちゃう方法があって、前者は多分こういうお芝居では無理だと思います。時間とか人員とかお金とかもろもろの問題で。わたしがやってるみたいな、一人である程度内容を管理して頭から終わりまでを作っていけるシナリオとは違いますから。
 後者に関しては、金字塔のマグノリアがあるもんだから、これを越えるのも相当難しい。強引に、でも美しく全てを繋げて、一気に盛り上げる。あれは同じような手法も使えないし、中々厳しいハードルですよね。
 『23分後』は、できるところはきれいに終わらせる方向でまとめて気持ちよくし、無理っぽいところは少しバカバカしい演出でもって繋げるという、フラグ収集と強引のあわせ技で、なんだかクドカンっぽかったです。
 ああいう感じの「まあスジは通してるけど無理矢理すぎるんじゃねえか」ってのがイライラしてしょうがない人には、あの終わり方は肩透かしかもね。
 そういった美しさにこだわるってわけじゃないんだけど、なんだか後もう少し、感動に至るまでの後もう少しが足りないような気はしました。
 それが何なのかは答えがすっと出ないので、そんなものは無いのかも知れないですし、ないものねだりなだけかもしれないですし、既に提示されているのにわたしがお話の全てを受け止め切れてないだけなのかもしれないんですが。
 うん、金欠で死にそうじゃなければ、次も観るよ。