M32011春参加作品告知・作品解説

 明日のM3用に書いた歌詞は、二本です。
 そのどちらも、内面世界に即した歌詞を書かせていただきました。いつものことと言われればそうかもしれませんが、今回は込めている意味が明確であるという点がいつもと大きく違います。
 震災以後、さまざまな激変がありました。中でもわたしは『個人の心』に焦点を当てて、今回の歌詞二つを書きました。
 震災からあと、どうにも押さえきれないやりきれない気持ちがある方は、是非聞いて、歌ってください。
 「M3はお祭りムードで楽しみたいのでそういう重いのはいい」という方はお手にとっていただかなくても結構ですが、「これから続く日々で溜まる、鬱屈した感情のやり場に困るかも」と言う懸念があれば、今は聞かなくてもいいですから、是非お手元に置いておいてください。あなたが辛いときに、横にいてくれる歌になるかもしれません。
 
 「うさんくさいねスピーカーから、聞きたくもない嫌な数字が……。朝っぱらに届く本当と嘘、眠ってても起きてもうんざりで」と陰鬱な目覚めから始まり、サビで「誰が悪い誰のせいだ!」と熱唱する、『誰が悪い』。
 どれだけが失われました。これだけの数が必要です。これ以上は危険な数値です。ここまでは安全です。間違えましたもう既に危険な数に達してました。耳に入ってくるそんな情報に、沸き立つ苛立ちを叫ぶ、そんな歌です。
 まさに時代性をそのまま切り取った歌詞ではありますが、これから先も何年でも何の辛さに充てても通用する言葉だと自負しています。
 他人に対する攻撃の色が強い歌ではありますが、最初から最後まで、何度か聞いていただければ、一体『誰が悪い』のかの答えも出るかもしれません。
 
 『誰が悪い』を書いたときには悩んだんですよ。
 これを結月さんに歌ってもらうということに対する、葛藤。「持ち味を殺してしまうんじゃないだろうか」って。
 歌い方にも一応の目安的なことを添えつつ、「でも結月さん自身がこの歌詞のようにやりきれない気持ちが高まっているようなら、それをぶつけていただいても一向に構わないです!」と最後に書き添えて、結果として出来たのがこの歌です。

 「この人ってこんな歌い方も出来たんだ」と評されているように、結月さんとしても新境地です。そして、わたしとしても新境地です。聴いた方に「この人ってこんな歌詞も書けたんだ」と言ってもらえたら、ちょっとうれしいですね。
 
 二曲目の『ぼっちの英雄譚』は、更に内面世界の歌です。ファンタジックな森の奥での井戸の主とのかわいらしい対決と、その対決の主役である英雄の歌です。
 全ての人が、全ての場所で、一人ぼっちで戦っている。そんな人々への歌です。
 一曲目で突きつけられた事実は置いといて、あなたの戦いを認める、そんな歌になっています。くじけそうになったときの、支えになってくれる歌です。
 
 解説したように、今回はかなりメッセージ性が高く、世俗に合わせた形での歌詞二つとなりました。
 しかし、意味は込めたとは言ってもその意味は一面性のものではありませんから、訴えているメッセージを受け取らなかったとしても、あなたの中で何らかの答えを見出していただいても、構いません。その姿勢はいつもの歌詞と同じです。
 『誰が悪い』『ぼっちの英雄譚』の二つだけをとっても、人によってはどちらが内的でどちらが外的なのか感じ方が違うでしょうし、説教くさいと思うかもしれないし、ふわふわしてわかりにくいと思うかもしれない。
 でもまあ、なんだか色々とグズグズとその辺りの思いを煮詰めてワケがわからなくなったら、表題曲の『Take The 'Maid' Cafe 〜メイド喫茶で行こう〜』が全部台無しにして持っていってしまうので、安心です。
 何か答えに行き着いたかと思えば、せいぜいそんなものは「※ただしイケメンにかぎる」とかその程度。勘違いだと思ったらまた最初から聴く。その繰り返し。
 攻撃したり擁護したり問題提起したり茶化したりと、今回のCDは問題作です。頒布価格は500円。どうぞよろしくおねがいいたします