残暑見舞い

日差しに虫が卵を産みつけている
たぎるアスファルト 鳥の卵も孵る
差し込んだ夕日 今日も真夏日
明日も真夏日だ 夏が孵るから
 
ゆるやかにとろけていく氷と
同じ速度で僕は走っている
そうしてようやくたどり着けたのは
つつがなく暮らせる日々かな
 
ボンネットの上 涼んで眠る
僕の寝顔と夢の言葉
目が覚めたって手に入らない
豊かな真夏日の色彩
ヒマワリがいっせいに僕のほうを
向いたと同時に枯れ果てていく
種が飛び散って僕に植わり
心の中から孵っていく
風鈴がいっせいに秋のほうを
向いたと同時に割れ落ちていく
鈴が飛び散って僕の周り
日差しの反射でめまいがする
 
だから僕は言ったんだ
「残暑お見舞い
 申し上げます」
口篭もりながら汗の中で
今しか言えない言葉だから
 
日増しにセミが美しくなってってる
伸びるビルディング 僕の姿を映す
溶け込んだ空気 どうも水色の
空気を飲むといい 空が曇るから
 
ボンネットの上 涼んで眠る
僕の寝顔と夢の言葉
目が覚めたって手に入らない
豊かな真夏日の色彩
カルピスの一杯を僕のほうへ
薄くて薄くてだけど白くて
今に視界がね白い水に
甘くて白くて薄まってく
気まぐれをいっぱいに僕のほうへ
集めて眺めて順に並べて
今に期待がね白い雲に
混ざると流れて時は止まる
 
だから僕は言ったんだ
「残暑お見舞い
 申し上げます」
口篭もりながら汗の中で
今しか言えない言葉だから
明日には言えない言葉だから