(一回前の)文学フリマとゲームマーケットの感想

 先日開催されたゲームマーケットの感想を読んでいたら、自分がその前の回に行った時のことを思い出したので、今更ながら思い出せる範囲内で書きだしてみようと思います。
 同日開催の文学フリマにも行ったので、それも合わせて。
 昨年の11月18日に起きたことを、それから約半年後の4月30日に思い出して書くという、日記。
 
 文学フリマに行きました。文芸同人誌即売会ですね。
 前から行きたいとは思っていたけどこれが初めての参加で、とりあえずブースをグルッと見て回ってくるだけが目的なので事前サークルチェックはなし、という状態。
 参加情報を聞いて本を買いに行きたいと思っていたところが2サークルあったけど、それの場所も押さえていない。会場でカタログもらって、これを片手に会場内をぐるぐるー。
 この時に決めた自分ルールがあって、「全部のサークルを回って書名だけチェックする」「気になったものがあったら後で買いに戻る」「無料配布の品物だけは、くれる分には全部もらう」このルールに則って、一階と二階の会場を両方歩いて来ました。
 
 結論としては、非常に残念でした。期待してたようなアイデアや熱意がなかった。
 自分は同人作品には、一般流通に載せるには難しいものとか、会社で出すと不利益でかそうだから自分一人で責任負ってこのアイデアを世に出してみようとか、そういうのを期待してるんですよ。でも全然そういうのがない。
 特殊製本とか、パズル風文学とか、よくわかんない題材とか、そういうのが全然なくて、本当にただの文芸同人誌ばかりで、自分としては肩透かしであります。最初に参加情報聞いて気にしてた2サークル以外、ホントみんな普通でして。
 「文学・文芸なんだから内容で勝負」ってことを言いたい人もいっぱいいると思うんですけど、そっち方面でも評価したいと思えるのがちっともなくて、それも残念。
 ほら、文章ものって手に取って試し読みして「おお、面白い!」ってなるまで時間が必要じゃないですか。だから手に取らせるまでのインパクトとかがすごく大事なんですよ。具体的に言うと、タイトル。もしくは表紙。
 表紙は物書きの手を離れるかもしれないからまだ目をつぶるとして(いやそれもそれで自分で製本して売ってるんだからそこも力入れろよとは思うけど)、タイトルぐらいもっとがんばってつけなさいよ、というのばかりで非常に残念。タイトルや著者名で「おっ」と思うのが、せいぜい1〜2サークルあったかどうか。
 ましてやあれですよ、そんな見栄えに華も素っ気もない、何も目を引く要素もない本を並べて机の上には他に何もなく、出してる奴も売り文句の一つも言わないでただ座ってる、もちろん誰も手に取りすらしないとか……あれはなんだ! 結構いたぞ!
 自分の書いた本だぞ! もう少し愛を持って扱ってやれよ! 何しにこのイベント来てるの? もう!
 ラノベとゲームに全て駆逐されてもいいのか! ここに来てるならもう少しがんばろうよ!
 と、物書きの端くれとしては非常に忸怩たる思いを抱きました。この忸怩たるっていう言葉の、「じくじ」っていう発音が、すごく「じくじたる!」って感じがしてわたしは好きです。
 
 それ以外にあった出来事として、印象的だったものいくつか。
 悪目立ちしているサークルさんもいくつかありました。一つはグロテスクな動物画像を表紙にしているところ。手には取らなかったし、そういう表現も『目に付く』という点では上に挙げた連中よりアリはアリかと思うけど、わたしは嫌いだ。人を刺して「ほら注目されたよ」っていうのと似た臭いがします。
 もう一つの悪目立ちさんは、いやこれ悪目立ちっていうのともまた違うんだけど、民族差別問題とかのタブー系テーマを扱っているサークルさんで、売り子の人がものすごく怖いの。雰囲気が。カタギじゃないのもう。
 すごく近寄りがたくて、明らかにそこのサークル周辺だけ空気感が違ってて、わたしはこういうのは大好きです。買わなかったけど、自分がそれほど興味あるジャンルじゃないけど、「こういう人たちがいてこういう本を出せばいいじゃん! そういう自由な場だよ!」っていうのがそこに完成されてて、良かったです。雰囲気は怖かったです。
 
 全部の無料配布をもらってきたので、もう手にはいっぱい抱え込むわけですよ、宣伝ペーパーやら無料配布本やら。ちゃんと製本してあるやつを無料で配ったりしてるんですよねみなさん。
 で、そういうのをもらってると、その隣のサークルさんも無料配布本を用意していたりする。「この人もらってくれる人だな」って荷物とかの状況から察して、自分のサークルの分も用意してる。するとその隣のサークルも、準備をしだして……。
 そんな感じで、3サークルぐらい並んでわたしに次々に本を渡すとか、プレゼントもらいまくる人気者みたいな状況になることもありました。
「いかがですかー」
「あ、はい」
「こちらももらってくださーい」
「あ、はい」
「……これ」(三番目に控える、妙に大人っぽい雰囲気を醸し出す影のある文芸女)
「あ、あ、はい」
 インパクトが大事だとは言ったけど、あの女性のあのキャラは何だったんだ。紅の豚みたいだった。
 
 こうしていくつか回った中で、呼び込みの声に唯一足を止めたのがですね。
ドクター中松の家に行ってきたレポートを本にしたんですけど、ドクター中松に興味ありますか?」
「……? いやドクター中松には興味ないけど、そんな本を売ってるあなたに興味はあるけど……?」
「全国のゆるキャラに最も使われているモチーフは何か、色は何か、統計取った記事も載ってます」
 買いました。
 
 大量の無料配布本と、これhttp://ameblo.jp/ginnanja-ichou/entry-11408457000.htmlを持ってゲームマーケットへ。
 (この記事をググって探して今思い出したけど、そういやドクター中松記事の本と抱き合わせでCDも買ったな)
 
 到着が時間ギリギリだったので、どこもほとんど完売。
 いやとにかくね、人と熱気がすごいの。ブース出してる方も、見に来る方も、すごい!
 こちらは文学フリマと対照的に、同人もプロも一般参加も企業もみんなアイデアにあふれていて、とにかく熱い! 今最も活気があるゲームジャンルだと言ってもいいぐらいです。
 これは前回の思い出し日記ですが、今回(4月28日開催)の時はもっと来場者が増えてもっと盛り上がっていたとか。
 お金が回るゲーム市場としては、パズドラなんかのスマホ対応ソーシャルゲームなんかが大ヒットですが、ゲームシステムや遊び方に対する熱意と、実際にそれを形にしたものの切れ味の良さは、このジャンルが強い。
 まだこれから要注目だと思います。人狼ブームやクトゥルフブーム、児童書関係でゲームブック復権の兆しがあるなど、後押しする要因も揃ってるしね。
 
 ほとんど売り切れてる各ブースを回り、予約してた分を入手し、気になってたゲームも買って(まだ残ってた、よかった)、木製ポーンを複数入手し。あるブースで足が止まる。
「……この、ムーミン500円ってなんですか」
「ああ、なんか昔のボックスゲームを入手したんですけどね。一個しかないです。もうイベント終わるんで値下げしました」
「ボックスでけえ(人生ゲームサイズ)。どんなゲームなんですか」
「わかんないんですよ、遊んでないんで。どうもニョロニョロを集めたりするゲームっぽいんですが……」
 箱の中を見せてもらうと、袋に入ったままでまだ切り離していない大量のプラスチック製ニョロニョロ。取説らしきものもあるけど、未開封。かなり昔にどっかのおもちゃ会社が作ったものらしいことだけはわかる。
「ゲーム内容もわからないんで、特価500円です」
「うーん……(すげえ欲しい。でもすげえかさばるなこれ)」
「あ、じゃあください」(←横で話を聞いてた知らない人)
「えっ」
 こういうのはインスピレーションと思い切りが大事。「商品説明聞いてたのはこちらの方が先なんで!」ってブースの人が擁護してくれたけど、「迷わず購入に名乗りを上げた方が正義ですよ」とムーミンとはそこでお別れしました。
 結局何だったんだろう、あのゲーム……。ウチにあってもねこがニョロニョロを弾き飛ばす未来しか見えなかったけど。
 
 ゲムマ終了後、ブースを出していた『もみあゲームズ』(友人のアナログゲームサークル。一応わたしも所属メンバー)の面々と、打ち上げに。
「今日文学フリマに行ってきて、唯一足を止めたのが、ドクター中松の家に行ったっていう本で」
「ああ俺も行ったことありますよ中松ハウス」
「はあ?」
 もみあゲームズには、やたらと知識豊富でおかしなことを色々知ってるメガネイケメンが一人いるんですが、改めて彼の守備範囲の広さに驚かされました。
 「あれ行きたくなるんですよね中松ハウス」じゃねーよ。
 
 あとなんか帰り道、酔って行き止まりにたどり着いちゃって、そしたらこのメガネイケメンに目の前に立ちふさがられて「残念でしたね一石さん、今日は帰れませんよ」ってドヤ顔で言われてキュンとしたことを記憶しているんだけど、なんだか記憶がイケメンキュン死に方面ばかりだな最近。
 ああでも書いてたら思い出した。わたしもメガネイケメンも気にしてたゲームがあって、ブースでゲーム説明聞いてたら「それってルールに欠陥あるんじゃね?」って同じポイントで引っかかって、でもそのゲームでやりたいこととか遊ぶ状況とかを想定したら買ってもいいかってなって、結局どちらもそのゲーム買ったって話。
 ある種のアイデアには、成立していなくても支払っていい対価があると思うんです。それで次に繋がるならね。アナログゲームは今、次に繋がっていっているぞ。