◯◯へのカウントダウン

そっと目を閉じると
指が焦げる匂いがして
この導火線が……
この導火線が
 
水浸しの家と落っこちて来る階段
歯を食いしばって
何度も踏み外す
何度も踏み外す
 
固いそこにぶつかってバラバラの終わりが来るのを知っているのに
何度も踏み外す
あるいはそれを望んでいるのか
 
この導火線が……
この導火線が
赤い糸となって
あなたに届く前にちぎる
全力でちぎる
 
この導火線に
まだ火は付いているのか
指が焦げる匂いは
まだ立ち込めているのか
それを知りたくてたまらないのに
見届けることもなく引きちぎる
 
やがて
硬いそこにぶつかってバラバラの終わりがやってくることを
夢想して笑った
導火線は結局ちぎれないままだった
僕はいつだって手遅れなんだから