失笑

いつも何かを失ったような
たまらない笑顔で
僕らは会うんだ
いつも笑顔なのに
どこから見ていても幸せそうじゃないんだ


窓の外には列車が
定期的に走り続けていて
近くの踏切が
定期的にカンカンと鳴っている
赤く点滅する光と音と
列車の走る風の勢いが
僕らのいるこの部屋の中にまで
網戸を抜けて漏れ入ってくる


カーテンを閉じよう
窓の鍵を閉めよう
クーラーのスイッチを
入れて部屋で涼もう


だけどリモコンが
見当たらなくて困っている
ようやく見つけても
電池切れで動かないんだ


汗をぬぐいながら
何かを失ったような笑顔で
僕らは会うんだ
何も話はしないさ
口を開いても
きっと言葉が出ないと
何かを失った僕らだから
それがわかっているから
だから僕らは
ずっと僕らは
笑顔でいるんだ
この部屋が暑くても


ずっと笑っていよう
何かを失った
なんだか壊れた
疲れ果てて眠った
そんな笑顔で僕は
振り返ってドアを見る
そこには君の
靴がもうなくなっていて
僕はたまらなくなって
ついに大声を出して爆笑するんだ