誰も僕の絵をかけないだろう

 タイトルは、フォークシンガー友部正人の同名曲より。僕はこの言葉こそが、アーティストとは何たるものかということを一言で表す、ひとつの金言であると思っています。
 誰でもない。自分にしかできない。誰にも模倣できない。その形を残すのは、その人だけにしかできない。こういったことを成し遂げる人物こそが、アーティストなんだろうと僕は思うのです。
 そのためには、唯一無二となる才能が必要です。しかし才能とは何なのかを追求していくと、更に状況は混迷していきます。
 結果をなせば、それで才能が認められるというものではない。いくつものことをこなせる人物は「多才である」と評価されるけれども、果たしてそれが有能な才能であるのかどうかは、いまいちはっきりとしない。むしろ一点突破の目覚しい才能を見せ付けるけれども、それ以外の社会生活は全く営めないような人の方が、才能を認められる傾向がある。
 さて一体、唯一無二のことを成し遂げるだけの才能とは、どんなものなんだろう?
 僕はこれを情熱と集中力であると考えています。才能とは、センスや頭のよさや身体能力なのではなく、あるものごとに打ち込めるだけの情熱と集中力であって、それによって自分の力をいかに特定の方向に高めることができるのか、そういうことなんじゃないのかなと思うのです。


 突然何の話をし始めたのかとお思いかもしれませんが、今日は才能ある人物たちを紹介しようと思って、冒頭からこんな感じに書いてみました。
 類まれなる情熱と集中力で、他の人にはできないことをやってのける人々。しかし、今回紹介する人たちのやり遂げたことは、決して芸術ではないのです。すごいけれども向かったベクトルはまったく芸術とは違う。
 しかし、こうした異常な才能が生み出した唯一無二な出来事と、世間一般に評価される芸術や業績の間に、一体どんな差があるのか? なんだかそれを考えていたら、面白くなってきてしまいました。
 限りなく器用なんだろうけど、それを向かわせる先は不器用だなあと、思わせてくれる人々です。


<俺の先祖は恐ろしい人物かも知れない・・・>
 上記リンクは、古い2ちゃんねるのスレの抜粋です。
 あるとき1が見つけてしまった、200年前の紙に描かれた怪しい絵と文字。暴いてはならないように思われる自分の先祖の秘密を、スレに集まった人々が徐々に解読していく様子と、カタルシスの高い決着がすさまじい。


スーパーマリオブラザーズ2 ロースコアアタック>
 人生は長い暇つぶしだと言いますが、その中でも最たる暇つぶしはゲームです。そしてそのゲームを、ある方向に特化して極めようとするというのは、最上の暇つぶしであると言えます。
 もともとやたら難易度の高いスーパーマリオブラザーズ2を、やり直しのきかない実機で一発プレイ。全ステージクリアまでの最低点を目指します。
 タイムを極限まで削り、倒す敵を最小限に抑え、コインを踏まないように細心の注意を払う。そして計算の末に出た「残り○秒でジャンプします」や「ドット単位で距離を調整します」といった最適な処理方法。中でも、ゲームの裏の裏をかこうとするかのようなロースコア突破方法の開拓には、目を見張ります。コメントが「おおおおおおおお」ってなってるところで自分も一緒に叫んじゃう。
 できれば、検討動画から順に見ることをおすすめいたします。


 一部お見苦しいコメントは、NG指定するとすっきりします。


<白鳥由栄>
 一部では有名な、ある意味日本を代表する偉大な人物……とも言える人物。
 罪を犯し刑に服すものの、刑務所の待遇に異を唱えて、脱獄を生涯に4回も行った男です。
 次々に上がるハードルと、人間とは思えないような生活を強いられながらも、それを執念と時間と手際のよさで上回ってしまう。
 そして、情に厚い。
 誰もこの人の絵はかけないな、そう思わせられる人物です。しかし、本当に切ない、胸が締め付けられる人生です。少々長文にはなりますが、是非一度上記の名前リンクから、読みに行ってみてください。