指よ届け

重く、暗く、静かで、滾る、苦みばしった、
コーヒーのような姿でいられたなら
だけれど、僕は、いつも、力無く、青白い、
ラムネ菓子のような指で文字をなぞるだけ


目を開けば鏡に映る自分に絶望して
目を閉じれば脳裏に浮かぶ自分に絶望する
合わせ鏡の間に立って目を閉じると
いくつもの自分がいくつもの自分を浮かべて
その自分たちが全て絶望を浮かべている


甘く、赤く、豊かで、目を奪う、蕩け出しそうな、
苺菓子のような君の唇に生まれた
その笑みは救い人のようだよ
僕はラムネ菓子のような指で宙に文字を書く
いくつもの僕が無限の言葉を宙に生んでいく
届け、指よ、届け、言葉よ、届かない