にぶい

水の中なので動きが鈍い
目覚めたとたんに視界が揺らいでいる
水流が起きればそれに身を任せて
息が詰まるまでずっとずっと底で緩やかに


煙に満ち溢れた街の風景を
立ち込めるスモークにまぎれて歩いて向かう
吸った煙が肺に留まると星が過ぎ
空がぐるぐると嫌な方向に回る快楽


布団に入ろうと倒れ掛かるけど
時の進みがまったくとても遅いので
空気と体の感触を長大に感じられる
ゆっくりと進む秒針を瞬きもせず見ていた


君の飲み残しの度のきついお酒
それを一気に飲み干し感覚が鈍る
喉を焦がして胃を焼きスピリッツが蝕む
「全て鈍感なのは気持ちがいいものだ」とつぶやく
「全て鈍感だと涙も出ないのか」と叫ぶよ