結婚騒ダンジョン! 〜俺と三匹の婚約者と仲間と罠と宝と転生チートと雑多なモンスターが織りなすナイトメアー・ビフォア・ブライダル〜

 ノベルゲーム用に設定を考えたのが8年ぐらい前。その後、5年ぐらい前に仕事で一度書き始め、諸事情で結局ポシャってしまった作品がありまして。
 表題のお話です。ファンタジー世界のダンジョンで、駆け出し冒険者の男が美女モンスター三匹のどれかと結婚させられることになる……というストーリー。
 考案した当初は割と斬新だったんですが、今だとそれほどでもないですね。むしろ時代にあってきた、とも言えるのかもしれませんが。
 書き途中のこのお話が、世に出ないまま終わるのが忍びなかったので、小説投稿サイトにアップし始めました。現在連載中です。
http://ncode.syosetu.com/n6038bw/
 
 タイミングよく、異世界ハーレムもの作品の賞レースもやっていたので、それにも参加。
 まかり間違って人気を得て、賞を取って出版とかになったら、いいですね。せっかくなので目指します。
 
 読むこと自体はサイトに登録しなくても出来るようですが、もし可能であれば、サイト登録をしていただき、評価ポイントをいただけるとうれしいです。
 賞レースにも引っかかりやすくなるので。
 評価ポイントを投じられるのは、最終更新分の最下段らしいです。連載作品だとどんどん評価が遠のくという恐怖のシステム。文章量が少ない今のうちに、少しでも得点が貰えると、助かるなあ。
 サイト登録しなくても別件のランキングに投票できるようにもしてあるので(目次下などの「勝手にランキング」という表示をクリックするのみ。面倒な操作は特にないです)、こちらだけでも。まあ。よければ。
 
 もしくは、宣伝して頂いてもとてもうれしいです。あなたが宣伝した先の誰かが、たまたまこのサイトに登録していて、評価をしてもらえるかもしれないですよね。
 サイト登録も宣伝も、そんなことするのすごく面倒だと思いますけど、もしかするとそれで来年もわたしが生きていけるかもしれないので。この場を借りて頼み込んでおきます。
 もう少し、生きていければいいんですけどねー。うまくいかないものですね。
 以下、冒頭部を貼り付けておきます。リンク先のほうが幾分読みやすいかも。縦書に変換して読むのも出来るみたいです。
 
<結婚騒ダンジョン! 〜俺と三匹の婚約者と仲間と罠と宝と転生チートと雑多なモンスターが織りなすナイトメアー・ビフォア・ブライダル〜>
 ■1・このジジイどもが仲人だってのか
 
「じゃあどうすればいいって言うの!」
 薄暗い洞窟の中で、爆発音に耳をやられながら、俺は叫んだ。
 わけがわからないことの連続だった。状況は後で順を追って説明したいけれど、そもそもこの事態を説明できるものかどうか。
 とにかく俺は今、わけのわからない状況下に放り込まれていた。
 
「つまり、逃げ場はないんジャ」
 傷だらけの太っちょドワーフがそう返し、ヤツの隣の痩せぎすのっぽのジジイが、それに続く。
「そう、進むしかないのさ。あの道のいずれかをね。イッヒッヒ!」
 不吉な笑いと共にジジイが指し示した先は、一風変わった三本の分かれ道だった。
 
 そのうちのひとつは、入り口の周りに血塗りのおどろおどろしい文字が書き連ねられていた。
 『WELCOME』とか『新たなMASTER』とか『血が足りない』とか『死』とか書かれている。
 どす黒い血でべっとべとになった、白い薔薇も飾られていた。
 
 ふたつ目の道は、まるでジャングルのように周囲が緑に覆われ、岩肌が見えなくなっている。
 しげった草のせいで道の先がどうなっているかは良く見えないが、とにかくその先からたくさんの獣の声がするのは確かだった。
 たまにギラリとした野性の目が茂みの奥で光る気がしたが、それが事実なのか錯覚なのかはわからない。
 
 最後のもうひとつの道は、石造りの立派な入り口になっていた。
 その先の道も、同じく綺麗に舗装されているように見える。
 入り口の上には、古代文字か何かで短い文章が書かれていた。あれはなんだろう?
 
「あれはな、『これより数々の困難を退ける勇者よ、良くぞ来た』と書いてあるんだ、ヒッヒ」
「うわあ! いつの間に隣に!」
 不気味な痩せぎすノッポのジジイがいつの間にか隣に来ていたことと、思考を読んだかのように話しかけてきたこととで、俺は心底ビックリした。
 狼狽するこちらをよそに、チビデブドワーフと、痩せぎすのっぽが、次々に語る。
「あの石造りの道の先はワシらの住まいでな、ワシらは後ほどあそこに帰る予定ジャ!」
「そう、つまりはあの先は、ダンジョンマスターの住む場所なのだ。その住まいで我々は、ダンジョンでの効率のいい冒険者対策を研究している」
「こ、効率のいい、冒険者対策って?」
 恐る恐る聞いてみると、ノッポのジジイから血も涙もない答えが返ってくる。
「それは、お前さんのような冒険者が身をもって体験してみれば、一目瞭然だな。イッヒッヒッヒ!」
 
「え、えーと……ほ、他の道の先は……どうなってるんだ?」
「さあて、そっから先はお前さんが確認するんだね、勇者さま」
「勇者さま、違いねえ! こんな酔狂な遊びに付き合う人間なんジャからな! ガッハッハ!」
 太っちょドワーフが、傷だらけの顔を崩して笑う。ジジイたちは更に言葉を続けた。
 
「まだまだこの先、お前さんは何度でも、この三つの選択をすることが出来るだろう」
「だから、今ここでどこに進んでも、あまり気にすることはないジャろうな」
「しかし、ここでの選択がその後のお前さんの全てを決めないとも、限らない。イッヒッヒ!」
「運命とは、えてしてそういうもんジャからな、ガッハッハ!」
「この先に待ち構えるものに、会ってくるが良い」
「おお、そうジャ。早く行って来い、あまり待たせるもんではないぞ」
「灯りはこれを持って行きたまえ……」
 
 のっぽのジジイは白衣の内側からランタンを取り出し、手渡してくる。
「暗闇に光をもたらす、特別製のランタンだよ……それでも、どこまで、このダンジョンの暗部を照らせるかは、わからんがね……イッヒッヒッヒ……」
 なんだかジジイ二人の話を聞いていたら、頭が混乱してきた。
 まるで無意味な説法を聞いているみたいだ。
 言いたいことはよくわからないが、なにか含蓄のあることを言っているようにも聞こえる。
 しかし、こと本人である俺が状況を良くわかっていないので、ほとんどの話は理解ができないのだった。
 俺の名前はグルーム・ルーム。
 近隣にダンジョンがあるという街に足を運んだ、冒険者駆け出しの男だ。
 そして今、こんな状況下にいる。
 
 放り込まれた穴から抜け出す方法は確かになさそうで、示された三つの道以外には、行く先もないようだ。
 俺はどうやら、三つの道のどれかを選ばなければいけないらしい。
 血塗りの文字で迎えられる道か。
 ジャングルのような野性味あふれる道か。
 怪しいジジイたちの住まいが先にあると言う、石造りの道か。
 ……普通、ダンジョンでこんな道が出てきたら、どれも選ぶのはNGな道ばっかりじゃねーか!
 だけれど俺は選ぶしかない。行くあてが他にないんだから。
 ここで気色の悪いジジイ二人といつまでも時間を潰しているのも、あまり気味のいいものではない。
 
・血塗れの道を進む
「死臭と酒と女王様」へ
 
・緑に覆われた道を進む
「森と獣と女医」へ
 
・石造りの道を進む
「宝と罠と労働者」へ
 
■2・死臭と酒と女王様
 
 ジジイどもに見送られながら、俺は血塗りの道を進むことにした。
 見た感じ一番デンジャラスな雰囲気が漂ってはいるものの、俺はこの道を選んだのだ。
 なあに、こういった道はたいていこけおどしで、実は特に何もないもんなのさ。
 そういうふうに自分を鼓舞して先に進んだが、どうにもなんというか、道の先から……。
 瘴気、としか言いようのないような空気が、悶々と立ち込めてきている気がする。
 
 道を進めば進むほど、気のせいは確信に変わっていき、感情のメーターも恐怖や後悔の方向にガクンと傾いていた。
 なんだか悲鳴が聞こえるし、ところどころに骨とかが散乱しているし。
 ていうかこの骨は何の骨だ。足がいっぱい生えてるんですけど。
 どんな生き物のモノかわからない骨が、その辺に散らばってるの、怖くてたまんないんですけど。
 
 恐怖に抗いながら一本道を進んで行くと、やがて行き止まりになる。
 そこには大きな扉があった。
「えっとー……なにこれ?」
 俺はその扉を見て、思わず疑問を口にしてしまった。
 扉はこれまでの洞窟の雰囲気とはまるで違った、ファンシーでピンクでかわいらしい、少女趣味の扉だった。
 全体に丸みを帯びたフォルム、かわいい字体で書かれた『ごしかのおへや』と言う文字、飾り付けられたリボン。
 ところどころに貼り付けられた、干したヤモリ。コウモリの羽。割れた鏡。血塗れの本。あれ?
 よく見るとこれ、ファンシーか?
 なんかこの飾り付けられたリボンも、変に赤々と脈打ってるし……。
 
 そんなことを気にしていたら、扉が「ギィイイィーッ……」と嫌な音できしみながら、ゆっくり開いた。
 部屋の中は豪奢な飾りや調度品で満たされているように見えたが、スモークが炊かれていて良く見えない。
 道はここで行き止まりだし……この中に入るしかないのだろうか。
 地雷臭しかしないんだけど、入るしかないのだろうか。
 悩みつつもほんの少しその部屋に足を踏み入れると、今度は扉が勢いよく閉まった。
 危うくドアに挟まれそうだったが、俺はその場からジャンプして逃げ出し、怪しい部屋の中に飛び込むようにして危機を逃れる。
 
「チッ……もう少しでペシャンコに出来たものを」
「い、今扉の向こうで、何か声しなかったか? しかもこれ、スモークだと思ってたのはほとんど蜘蛛の巣じゃないか……ぺっ、ぺっ! 口に入った!」
「あれ、大丈夫? 取るの手伝ってあげよっか?」
 話しかけてきたのは、漆黒のミニドレスに身を包んだ、女の子だった。
 
「え……え?」
「なに? びっくりした顔して?」
「えーっと……? ど、どちらさまでしょうか……?」
「あたし? あたしの名前はゴシカ。ねえねえ、あなたは?」
「え? 俺は、グルームだけど」
「そっかー、グルームね。どうぞよろしくー」
「あ、えっと、どうぞよろしく」
 
 部屋の中に飛び込んだ俺は、古めかしい真っ赤なソファーの上に乗っていた。
 そしてそのソファーで隣に座っていたのが、ゴシカと名乗る女の子だ。
 透き通るような白い肌と、それを際立たせるつややかな漆黒の髪。綺麗な長い睫毛の瞳。
 シックなロンググローブとタイツに覆われた、華奢な腕と脚は、俺のような冒険者とは縁遠い生活を送っているであろうことを連想させる。
 び、美人だ。何でダンジョンの奥に美人が。
 しかもこんな物騒な道の先に美人が。場違いすぎる。
 いや待てよ。これはあれだな。
 大体こういうときは、魔物の幻術とかだよな。俺は何かにだまくらかされているに違いない!
 冒険者として旅立つ前に勉強して、それぐらいなら知ってるぞ。
 
「もー、一回顔にくっつくと取りにくいんだよね、蜘蛛の巣って」
「は、はあ」
 俺の顔の蜘蛛の巣を取ろうとしている彼女は、自分の顔がどんどんこちらに接近していることに気づいていない。
 急に整った顔立ちの女の子の顔が近づいてきて、なんだかドキドキしてしまった。
 いかんいかん! 完全に術中じゃないか!
 「正体はわかってるんだぞ!」とか相手に強く言うべきところだここは! ダンジョンを進む、冒険者として!
 
「あ、あの……」
「ん、なにー?」
「そのー。えっと。顔が、近いかな……と」
「あっ」
「う、うん」
「……!」
 俺の指摘で、互いの顔が妙に近いことに気づいた彼女は、顔をうつむかせつつ、一旦距離を離した。
「ご……ごめんね! 蜘蛛の巣取るのに夢中になってたから、気づかなくて!」
「え、あー、いや、いいんだよ、アハハハハ」
「そ、それなら良かった。あは、あははは」
「アハハハハ」
 アハハハハじゃねーよ。何で向い合って笑い合ってちょっと楽しくなってるんだよ俺。全然ガツンと強く言えてないじゃないかよ。
 
「ところでグルーム。ブラッディ・メアリー作ったんだけど、飲む?」
「あー、ちょうどいいや、ノド乾いてたから」
「じゃあ、あたしの分もあるから、一緒に飲もうか」
「うん、飲む飲む」
「どう、おいしいかな?」
「いやーおいしいねー、アハハハ」
 ダンジョンの中で急にかわいい女の子にお酒を勧められて、おいしいとか言いつつも、実は味も良くわかってないんですけどね。
 でも楽しいからいいですけどね。あはははは。
 
 い、いやいや、いいかげんにしよう。異様な状況を楽しんでいる場合でもないだろう!
 この酒に毒でも入ってたらどうするんだ!
 俺は心の中で自分に喝を入れ、少しだけ冷静になった。
 お酒を飲みすぎて酔いが回る前に、冷静になれてよかった。
 でもこれが毒だったら、もう手遅れかもしれないけど。飲んじゃったし。
 今のところ体に不調はないから、多分大丈夫だと思うけど。そう思いたい。
 確かにこの子が屈託なく笑う様子はかわいらしいが、いくらなんでもさっきまでの状況から一変しすぎで、あまりに場違いだよな。
 なんでこの子は、こんなところにいるんだ? 不自然にも程がある。
 悪意のある幻術とかじゃないとしても……どっちにしろ、これは真実を知るべきだろう。
 一度ちゃんと質問をしておこう。
 
「あ、あのさ」
「アハハハハー。ん? 何?」
「君はそのー、何者?」
「何者って?」
「いやその、君も俺と同じように捕らえられて、このダンジョンに放り込まれた、とかなのかなと」
「違うよー。さっきも言ったけど、あたしはゴシカ。この部屋はあたしの部屋だよ。ドアに書いてあったでしょ?」
 彼女は扉の方を指差した。
 
「あ。そういえば、『ごしかのおへや』って……」
「そうそう。あなたが来ると思って今日は部屋を綺麗に飾ってたんだけど、ちょっと蜘蛛の巣が多かったかなー」
「え? なに、どういうこと? 俺が来ると思って?」
「蜘蛛の巣の余計な分は、あなたが食べちゃって」
 そう言いながら彼女は、俺の体から取った蜘蛛の巣を両手でぐるぐる丸めて、ポシェットに押し込んだ。
 いや、違う。この子が身につけているのは、よく見るとポシェットじゃない。
 それは一つ目の生首だ!
 
「不要物をわたしに食わせて処理させるのは、やめてもらえませんか姫様」
 そしてその生首は、丸めた蜘蛛の巣をむしゃむしゃと食べ、あまつさえ女の子と会話をしているのだ。
「いいじゃない、ワタアメみたいなものでしょ!」
「それにしては甘味が足りませんのう……」
「しゃしゃしゃ、喋った!」
「え、どーしたの?」
「喋った! 死体が喋った!」
「ああ、うん。これね、水死体の生首から作られた、アンデッドなんだ!」
「アンデッド!? そうか、この道にずっと感じていた奇妙な違和感は、こいつのせいか!」
 一つ目の不気味な生首を指差すと、今度は別の声が女の子の横から聞こえた。
「何もそいつだけがアンデッドなわけでもないニャー」
「あら」
「うわあ! 一つ目の黒猫! しかも当たり前のように喋りながら登場した!」
「まだいるザマスよ」
「あらあら」
「今度は一つ目のコウモリ!」
 俺は開いた口がふさがらない状態だった。やばい、アンデッドだらけだ。どうしよう。戦うか? 勝てるか?
 さほど戦闘力が有りそうなやつらじゃない。とはいえ、これじゃあ女の子を人質に取られているようなもんだし……。
 
「それにしても姫様、この男はだいぶ頼りない感じがしますのう」
「そういうことを言わないの! まだこの人もダンジョンに慣れてないんだから!」
「はあ、そういうものですかねえ」
 ……なんでだ? この女の子はどうして、全く動じないんだろう。アンデッドたちに操られているのか?
 半ばパニックになって状況を理解できていなかった俺は、それでも剣の柄に手を置いて、冒険者らしい一声を発した。
「そ、その女の子から離れろ! 化け物たち!」
「はあ? なんですと?」
「それは無理だニャー」
「我ら姫様の大事なお供ザマスから」
「う、うるさい! 死体が俺と会話をするな! このアンデッドめ!」
「いやその、死体が会話と言うことなら、姫様だって死体ではあるわけですが」
「なんだと!! ……へ? なんだと?」
 
「そうニャ、姫様は偉大なアンデッドニャ。その偉大な方とさんざん会話しているのはお前じゃニャいか」
「姫様特製のカクテルまでご馳走になってからに」
「姫様は我らアンデッドの上に君臨する、ノーライフ・クイーンザマスよ」
「んもー! みんなあんまり姫様姫様って言わないで! そんなに偉いわけじゃないんだから!」
「偉いくせにー」
「そうニャそうニャ」
「いかにもザマス」
「んもー! うるさいー!」
 俺は件の柄に手をかけたまま、血の気が引いていくのを感じていた。
「姫様……? アンデッドの?」
「う、うん……そうなの」
 彼女は少し恥ずかしそうに身をよじらせて、一つ目の黒猫をわしわし撫でている。
 そして、もじもじしながら、こう俺に告げてきた。
 
「そんなわけで、そのう……身分の差がどうこうとか、周りはうるさいかもしれないけれど」
 ゴシカと名乗る女の子は、俺の目を見つめて更に続けた。
「結婚を前提に……お、おつ、お付き合いをお願いします!」
 
 は?
 疑問を感じつつも、その照れた姿、かわいらしい声、小さく震える肩。しぐさの全てが、俺の心を一瞬掴んだ。
 しかしそれと同時に、口の中に、奇妙な味が広がる。
 酒と混ざった鉄の味。さっきのブラッディ・メアリーだ。
 この味は、血?
 この子は、ノーライフ・クイーン?
 つまり、吸血鬼??
 
「さっき、あたしの作ったお酒をおいしいって言ってくれたし、身分や生まれの違いはあっても、味覚が合うのは大切というか……ね? だからその、まず最初の一歩はうまく行っているんじゃないかなーと、あたしは思うんだけど」
「姫様、もうあいついないニャ」
「え?」
「すごい勢いで部屋を出て行きましたぞ」
「ええー?? あたし何か悪かったかなあ? ねえ何か失敗した?? 服とか部屋とか、かわいくなかったかなあ……?」
 
 本能が全ての思考を支配して、俺の足を部屋の外へと向かわせた。
 ここは俺のいて良い場所じゃない!
 そそくさと走って、その場を退散する。
 アンデッドに取って食われたら死ぬだけじゃ済まない、死後俺まで、アンデッドだ!
「なんでえ逃げてきやがった」
「うわあ! ここにもアンデッドの群れが!」
 腐乱死体や、骨や、ボロ布の人影や、幽霊たちが、俺の周りを取り囲む。
 
「やっぱりさっき扉で挟んで殺しておけば良かったんじゃないかなー」
「ミンチにしちまえば、このツラもちょいとはハンサムになるしな」
「このアンデッドども……! 部屋に入ろうとした時の扉のアレは、お前らか!」
「そーだよー」
ポルターガイストのお迎えとは粋でしょう?」
「うるさい、とにかくあっち行け! 行け!」
「うぇー」
 アンデッドたちを牽制すると、連中はやる気なく、その場をのそのそ離れていく。
 俺はその間をかいくぐって、ジジイたちに出会った場所に戻って行った。
 
 それにしてもノーライフ・キングだなんて、最上位の吸血鬼、アンデッドを統べる存在じゃないか。その女版だって?
 そんなやつがここにいるのか!? 街外れの小さなダンジョンじゃなかったのかよ!
 もしかすると俺が放り込まれたこの場所は、とんでもないところなんじゃないだろうか……。
 
 冒頭部は以上。続きはこちらです。
 よければよろしく。
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