時間はもうないのだ

背中を見つめてると
埃が散らばると
8月の夢みたいな
とろけたバスが来る


枕元で排気が
安心のように満ちて
僕は君の動かない
まぶたに手を振った


時間はもうないのだ
時計を戻しておこう
二人だけが知ってたあの時間に
針だけでも戻そう


二人だけが知ってた
時間はもうないのだ
時計だけがカチコチと鳴る部屋で
だいぶ喉が渇く


苦くて重みのある
ビールを飲み干すか
甘くて透き通った
サイダーを開けるか
よく冷えて味のない
茶で洗い流すか
バスが出る前に決めなきゃダメだ
もう乗らないとな


渇いた喉のまま
排気が胸を満たす
もうない時間を置き去りにして
バスは走り出す


僕は君の動かない
まぶたに手を振った
僕にはもう時間はないのだ
行くあてもないのだ